この作品は私に高い衝撃を与えました。相当出力の高い作品でした。キーポイントは愛。ありきたりの題材ではあるが戦争、歌、人間といった素材を生かし極度の世界を創り出しています。特に観る側に選択肢を与えておきながら最後は同じ場所にたどり着くような作りは、観る側の思考を味方につける良い案だと思います。思い入れがなく決めたものより悩んで決めたほうがその作品に携わる時間が長くなるためです。また音楽の良さを引き出すために時間をかけて違和感をほどく形もしっかりと作られていて迷いなく歌が届きました。例えるならば防具を自分の意思で外し攻撃を受けるようなイメージだ。
具体例を挙げればオープニングやエンディングの曲をここぞというタイミングでアレンジしたり、エンディングに繋げるように物語を進めたりすることです。既に頭で処理した状態で聴くのでより近しい気持ちになれます。
考え深い人が見るにもマクロスシリーズとしての重みがあるので大丈夫。立体的な造形や未来技術など世界観も楽しめる事でしょう。それで特に良かったのはアルトが番傘を使っていたり、和食を作っていた事です。またルカがキリスト教の名前を使っているのも刺さりました。ユダシステムの意味が初見でわかったのは嬉しかったです。
歌の力を遺憾無く発揮した要因として『想い』が作品から溢れるばかり伝わってきます。登場人物のほとんどが愛をかかげており、相手を好きになっています。この作品で最も感銘を受けたのは歌い手に意思がある事です。歌う者の気持ちで、同じ音の中に違いを表現したのは素晴らしかったです。本能的に感じる歌だからこそ、歌いたくないときは歌わない。歌がもつ価値を大切にしているのが伝わりました。
そして本能を浮き彫りにさせるように厳しい世界で作られているのも見逃せません。戦争や病気と危機的な状態だからこそ愛を急ぐのです。歌詞にも『生きたい』『愛してる』『キス』と言った直接的な表現が使われています。また自分の目的を見つめ直す描写も見られます。その瞬間の気持ちを大切にするからこそ美しいのかもしれませんね。
2020何11月18日 記
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